エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
今まで誰にも言ってこなかったし、聞かれても誤魔化してきたけれど、環になら本当の事を言っても良いかな、と思った。
「この年になって情けない話だけどさ、……恋愛が怖いんだよね」
「恋愛が怖い?」
「うん。大学時代に、手痛い失恋しちゃってさ。それ以来、恋愛が怖い、面倒くさいって思うようになっちゃった。だから社会人になってからは仕事一筋なの」
「……」
環はフォークを置き、真面目な顔で私を見つめた。
「その失恋っていうのは、男の方に原因があるのか?」
「どうなんだろうね。私にも原因があったのかもしれない」
それから私は、環に大学時代の恋愛の話を包み隠さず話した。中高大ずっと女子校だった無知な私が、初めて恋をした人のことを。
その人とはテニスのインターカレッジで出会った。私より二つ年上で、周りの男の人よりずっと大人の雰囲気があった。運動神経も良くて、周りに気配りが出来て、頼りがいのある優しい人だった。当然、周りの女の子からも人気があって、私からすると憧れの存在で、きっと恋をするだけで終わるだろうと思っていた。
それがある日、突然告白された。私なんかが、って思ったけれど、君が良い、と言われて、周りには内緒で付き合い始めた。デートしたことがない私を色んな場所に連れて行ってくれた。遊園地、水族館、動物園、カラオケ、ドライブ、ちょっとした小旅行。初めてもその人に捧げた。
その人と付き合っていた時は、毎日が楽しくて、輝いてた。
――でも、私はひょんなことからその人の裏を知ってしまった。本当は遊び人で、色んな人と平気で浮気出来る人だったということを。私も遊びのうちの一人で、「ウブ」なところが良くて、結局は体が目当てだったということを。
信じられなかった。色んな場所に連れて行ってくれたのに、結局は「本命」なんかじゃなかった。遊びのうちの一人で、それがバレれば終わり。ゲーム感覚で女性と付き合っている男の人だった。
私はそれ以来、誰かに恋をするのが怖くなってしまった。愛しくなったり、切なくなったり、苦しくなったり、そういう全てのエネルギーが、別れれば一瞬にしてゼロになる。その強烈な虚しさは、新しい恋愛よりも、仕事に邁進する方向へと向かい、結局今の今まで来てしまった。