エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
「た、助けてくれてありがとう。もう、大丈夫だよ」
 私がそう言うと、環は低い声で私の名前を呼んで一層抱き締める力を強めた。

「梓」

 名前を呼ばれて、胸の奥がぎゅう、と切なく締め付けられていく。この感覚は、私がかつて恋をしていた時の感覚に似ていた。

 もうこんな思いをしたくない、今までずっとそう思っていたはずなのに。私は環に抱き締められて、名前を呼ばれて、まるで恋しているみたいな感覚に襲われる。ただの仲良しの幼なじみだったはずなのに、どうして?

「俺は…。俺は、アメリカに行ってもずっとお前のことを忘れなかった」
 間近に聞こえる環の息づかいに、頭のなかがぼんやりとしていく。本当に、これは現実なのだろうか。

「ずっと会いたかった」

 ……ずっと会いたかった。その『会いたかった』の意味を聞こうとしても、言葉が上手く出てこない。

 鼓動だけがどんどん早くなっていって、全身が熱くなっていく。私が何も言えないで居ると、環は私の体を強引にひっくり返し、胸の方へと引き寄せて抱き締めた。


「俺がお前の失恋の痛みを上書きしてやる。だから――俺と付き合ってくれ、梓」
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