エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
ちょうどその時、始業を告げるチャイムが鳴った。営業も営業事務も社員全員が椅子から立ち上がり、フロア中央にある部長席の方を向く。
白髪交じりの黒髪に、少し強面の城崎部長が部長席の前に立つ。部長は住忠商事がIT商材を取り扱い始めた時から、ずっと事業に関わってきて、業績向上に貢献した立て役者だ。
そんな部長の横に、さっきの中途社員の男の人が立っている。緊張している様子も無く、表情一つ変えずに前を見ていた。
前髪は眉に少しかかる位で斜めに流していて、シャープな顔立ちをしている。正面から改めて見ると、クールな雰囲気が一層引き立って、桃子ちゃんが言うような「仕事できそうなイケメン」に見える。
営業事務の子たちに目を向けると、みんな熱っぽい視線を送っていた。営業と営業事務は一心同体だから、もし自分が担当になれば関わる機会も自然と増えて恋も生まれやすい。
少し前まではそうやって社内恋愛で退社していった子も多かったけれど、今の営業は異動が重なったり、ほとんどが既婚者でベテラン社員の比率が高くなっていたので、部署内の恋愛は絶望的だった。だから皆、内心部署内恋愛を期待してるんだろう。
城崎部長が、「おはよう」と良く通る声で挨拶をすると、社員も「おはようございます」と元気よく挨拶を返した。
「見て分かると思うが、今日から一人、新しい社員を迎えることになった」
城崎部長がさっと横に身を引くと、男の人が代わりに中央に立ち、気をつけの姿勢で頭を下げた。