エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#12 金曜の余韻
「先輩、倉持さんの歓迎会のメール、見ました?」
昼休み、桃子ちゃんが手作りのお弁当を美味しそうに頬張りながら話しかけてきた。
「……え?」
「え? じゃないですよー、先輩。さっき城崎部長からメールが来てましたよ」
朝コンビニで買ってきたおにぎりを片手に、メールをチェックする。確かに、11時過ぎに城崎部長から環の歓迎会とITソリューション部の忘年会についてのメールが入っていた。
「あ、ああ。これね。今月末の定時退社日にあるんだ」
桃子ちゃんの大きな瞳が私の顔をのぞき込む。私は慌てて笑みを繕い、おにぎりを頬張った。
「先輩、今日は朝から何か変ですよ。いつもならばしばしキーボードを叩いて、電話応対もばりばりこなしてるのに、ずっとぼんやりした感じで」
「そ、そんなことないよ。いつも通りだよ」
――違う。そんなことないわけ無いし、いつも通りじゃない。私は全く真逆のことを口にしてる。
金曜日、数年ぶりに男の人に抱き締められて、しかも告白までされてしまった。よりによって、その相手は、環だ。
正直、頭の中が真っ白になって、どうしたら良いのか分からなかった。環に会えたことは嬉しかったし、一緒に仕事出来るのも嬉しかった。
ねぎらいの言葉に胸は熱くなったし、失恋話を自然に受け入れてくれたことに不思議な安らぎさえ覚えた。雰囲気ががらりと変わった環を格好良いと思わなかったと言えば嘘になる。
でも、環に好きだと言われたとき、どうしたら良いのか分からなくて、頭の中がぐちゃぐちゃになって、「怖い」と言ってしまった。
土日もほとんど布団から出られないまま、ぐるぐる昔の環と、今の環のことを交互に考えた。環は大切な友だちだったけれど、恋愛対象として見たことはなかった。十数年会っていなかった環は、相変わらず不器用で素直じゃなくて、でも優しかった。
きっと環は、昔の恋人とは違うだろう。でも、もしもまた傷ついたらどうしよう、そう思うと、すぐに環の告白を受け入れることが出来なかった。
昼休み、桃子ちゃんが手作りのお弁当を美味しそうに頬張りながら話しかけてきた。
「……え?」
「え? じゃないですよー、先輩。さっき城崎部長からメールが来てましたよ」
朝コンビニで買ってきたおにぎりを片手に、メールをチェックする。確かに、11時過ぎに城崎部長から環の歓迎会とITソリューション部の忘年会についてのメールが入っていた。
「あ、ああ。これね。今月末の定時退社日にあるんだ」
桃子ちゃんの大きな瞳が私の顔をのぞき込む。私は慌てて笑みを繕い、おにぎりを頬張った。
「先輩、今日は朝から何か変ですよ。いつもならばしばしキーボードを叩いて、電話応対もばりばりこなしてるのに、ずっとぼんやりした感じで」
「そ、そんなことないよ。いつも通りだよ」
――違う。そんなことないわけ無いし、いつも通りじゃない。私は全く真逆のことを口にしてる。
金曜日、数年ぶりに男の人に抱き締められて、しかも告白までされてしまった。よりによって、その相手は、環だ。
正直、頭の中が真っ白になって、どうしたら良いのか分からなかった。環に会えたことは嬉しかったし、一緒に仕事出来るのも嬉しかった。
ねぎらいの言葉に胸は熱くなったし、失恋話を自然に受け入れてくれたことに不思議な安らぎさえ覚えた。雰囲気ががらりと変わった環を格好良いと思わなかったと言えば嘘になる。
でも、環に好きだと言われたとき、どうしたら良いのか分からなくて、頭の中がぐちゃぐちゃになって、「怖い」と言ってしまった。
土日もほとんど布団から出られないまま、ぐるぐる昔の環と、今の環のことを交互に考えた。環は大切な友だちだったけれど、恋愛対象として見たことはなかった。十数年会っていなかった環は、相変わらず不器用で素直じゃなくて、でも優しかった。
きっと環は、昔の恋人とは違うだろう。でも、もしもまた傷ついたらどうしよう、そう思うと、すぐに環の告白を受け入れることが出来なかった。