エリート社員の一途な幼なじみに告白されました

 桃子ちゃんは小さくため息を吐いた。佐々木さんは眼鏡をかけた細身の中途社員で、結婚はしているけれど奥さんにうだつが上がらないという。

「正直二週間とか準備期間が短すぎだし、単なる忘年会なら気が重いだけですけど、なんて言ったって倉持さんの歓迎会も兼ねてるんですよ! これは倉持さんと仲良くなれるチャンスかもって期待してます」

 ……い、言えない。環に告白されたなんて。考えるだけであの時の温もりと言葉が蘇ってきて勝手に全身が火照ってきた。

「先輩は倉持さんと二週間仕事されてて、仲良くなりました?」
 私はむせそうになるのを、残りのおにぎりを無理矢理口に詰め込んで堪え、お茶で流し込むと首をぶんぶんと左右に振った。

「ほら、いつも会社に居ないし。大体は電話かメールでやり取りするくらい」
「倉持さんって、見た目みたいに、接するときもクールな感じなんですか?」

 桃子ちゃんは空になったお弁当箱をピンク色の包みで包んで、環のデスクをちらりと見遣った。

「そ、そうだね。クールだよ。ロボットみたい」
「そうなんですかあ、そんな人がふと笑ったりしたらきゅんと来ちゃうんだろうなあ」

 桃子ちゃんの口許がにやけている。桃子ちゃんと環が話しているところを想像すると、鼓動が早くなっていくのを感じて、私は気持ちを紛らわそうと席を立ち上がり、ゴミ袋におにぎりのゴミや空のペットボトルをまとめた。

「幹事、大変だろうけど頑張ってね」
「はい、ありがとうございます!」

 私はそそくさとゴミ袋を持って給湯室へと向かう。なんでだろう、心がむずむずする。私、環とどうなりたいんだろう。ああ、まだ、金曜から頭の中は混乱したままだ。
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