エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
城崎部長が仕事の話を振ってくれて、なんとか間が持ったけれど、正直会話の内容は全く頭に残らなかった。
その間にもぞくぞくとITソリューション部の社員が集合し、あっという間に開始時間になった。
入り口に居たはずの桃子ちゃんが、唯一Aのテーブルで空いていた環の隣の席に着き、代わりに佐々木さんが席を立つ。
「お、お待たせしました。皆様、本日は仕事がお忙しいところお集まり頂き、ありがとうございます。これから、倉持さんの歓迎会と忘年会を始めさせて頂きます。進行役は佐々木です。よろしくお願いいたします」
佐々木さんが、少し大きめの声を出して挨拶をすると、拍手が沸き起こった。
「それでは、まずは城崎部長から開会の挨拶を頂きたいと思います」
佐々木さんに誘導され、城崎部長が席を立った。
「えー、皆さん、いつも仕事ご苦労様です。本当にありがとう。幹事の二人も短い期間でよく頑張ってくれました。ありがとう」
城崎部長の言葉に、社員が部長に向かって軽く頭を下げた。
「11月から倉持くんが入ってくれて、ITソリューション部は一層の発展が期待できます。倉持くんは忙しくてなかなか会社に居る機会がないけれども、今日の機会を生かしてぜひもっと交流を深めてもらいたいと思います。幹事の二人がイベントも用意しているようなので、早めの忘年会も兼ねて今年一年の疲れも発散しつつ、楽しみましょう」
挨拶が終わると拍手が沸き起こり、部長は満足そうな面持ちで席に着いた。
「続いては、倉持さんから一言挨拶を頂きたいと思います」
佐々木さんが環を手のひらで差して座ると、代わりに環がすっと立ち上がって軽くお辞儀をした。
「倉持環です。なかなか皆さんとじっくりお話しする機会が無く、このような機会を頂けてとても嬉しいです。私の事をだけでなく、私自身も少しでも皆さんのことを知れたらと思います。入ったばかりで至らないところだらけですが、何卒よろしくお願いいたします」
意識して言っているのか、環の口調は入社当初の挨拶よりは少し柔らかかった。スラスラと詰まることなく挨拶を済ませると、拍手が起こり、最後にもう一度お辞儀をして席に着いた。
「お酒は飲み放題で、120分制です。お好きな飲み物をご注文ください」
佐々木さんの案内で各テーブルの人たちは傍に待機している店員に飲み物を注文し始めた。