エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
「それじゃあ、今日はそんなスマートな倉持くんにスマートじゃなくなってもらおうか! ビール瓶を1本、いや二本追加で」

 城崎部長が手を挙げてビール瓶を追加で注文する。環は、
「部長、お手柔らかにお願いします」
 と言って、少し困ったように笑った。

 すかさずビール瓶が運ばれてくると、城崎部長は環のグラスにビールをつぎ足す仕草をして、環はグラスを持って受け止める。

 すると、部長は環に、
「倉持くんから見て森本さんはどんな印象なんだ?」
 と問いかけた。端から見たらごく普通の質問で他愛ない世間話なのに、私はその質問にどきりとして体を強ばらせた。

 環は真剣な表情で少し考えるように間を置き、
「……そうですね、とても仕事に対して真摯で責任感が強い方だと思います。私が沢山仕事をお願いしても、期日通りにきちんとやってくださいますし、とても助かっています」
 と答えた。

 直接環に言われたときも恥ずかしかったけれど、人前で褒められるともっと恥ずかしくて顔から火が出そうになる。

「私もそう思うよ。だから倉持くんの事務に森本さんをお願いしたんだから」
「さすが先輩です。尊敬します!」
 お世辞でも周りに褒められると、余計に緊張してしまう。

「そ、そんなことないです」
 消え入りそうな声になって、私は傍にあったグラスを持ってぐいっとビールを飲み干した。

「お、良い飲みっぷりだね。ほら、もう一杯」
 促されるままにビールをついでもらい、私はまた半分位を一気に飲んだ。アルコールが回り、体がかあっと熱くなった。

 その時、佐々木さんがちらりと腕時計を見て、桃子ちゃんに何か合図を送った。すると桃子ちゃんは席から立ち上がり、

「みなさん、楽しんでいる最中かと思いますが、最初のイベントを始めたいと思います!」
 と声を上げた。

「おおー、なんだなんだ」
「よっ、良いねえ!」
 既に出来上がっている営業の男性が何人か桃子ちゃんの声に反応して大声を出す。

「ずばり、倉持さんの歓迎会ということで、倉持さんにズバッと色々聞いちゃうコーナーです」
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