エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#16 取られたくない ―環Side―
歓迎会の翌日、俺は二日酔いでベッドから起き上がれずにいた。
俺の歓迎会だからとなるべく社会人としてトゲのない態度で接するように心がけたが、結城さんのイベントのおかげで「近寄りがたい倉持さん」のイメージがさらに覆ったらしく、今まで交流のなかった社員の人たちに連れられ二次会に付き合わされた挙げ句、終電まで返してもらうことが出来なかった。
胃の中がムカムカして何も受け付けない。
帰り道になんとかコンビニで買ってきた栄養ゼリーと水で空腹をしのぎ、スマートフォンの画面を開き、「無事に帰れました」という梓からのメッセージをぼんやりと見ながら吐き気が収まるのを待っていた。
……俺は昨日、大きな賭けに出た。
羞恥心を押し殺して、あの場を借りて梓に気持ちを伝えることに決めた。今まで直接話せなかった梓と偶然同じテーブルになり、結局気まずいままだった。
だから奇しくもイベントで「恋人はいますか」と聞かれた時、もうこの機会を逃せば梓に自分の気持ちを伝えるタイミングをつかめないまま距離だけが離れていくと思った。だから、嘘偽り無い事実を、俺はあの場で告げた。
――恋人は、いません。
――恋人はいませんが、好きな人は居ます。
――私の小学生の頃の幼なじみです。