エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#19 それからのこと
それから、私と環は正式に付き合うようになり、毎週末に会うようになった。空白の十数年を埋めるように、環はアメリカでの話、私は女子校での話を沢山した。
話しても話しても足りない位、環と過ごすのは楽しくて、いつもあっという間に時間が過ぎていった。
一方で、平日、会社に居るときの環は、「仕事の出来る住忠商事の営業マン」の顔で、終日営業先を飛び回り、会社に居るときもクールな表情一つ変えずに、真剣な表情でパソコンに向かい合っていた。
環の本心が分かるまでは冷たいと感じていたけれど、今では二人で会うときとのギャップが格好良いと思ってしまう自分が居て、照れくさい。
私も私で、相変わらず環の仕事を沢山さばく生活が続いていた。正直仕事の量は大変だけれど、休日に見せる環の表情や、抱き締めてくれる温もりを感じると、また「頑張ろう」と思えるのだった。
「せーんぱい」
12月も4週目にさしかかろうとしたある日の昼休憩、桃子ちゃんに話しかけられた。
「ん? どうしたの」
社内販売のお弁当を空けようと蓋を開きかけた私は、桃子ちゃんの方を見た。
桃子ちゃんは手作りのお弁当を箸でつついて私の顔をにやにやと見つめている。
「もうすぐクリスマスですね」
……確かに、今度の金曜日はクリスマスだ。わざわざ環がホテルにディナーの予約を入れてくれて、しかもその日の晩はそのままそのホテルで過ごすことになっていた。
泊まるとなれば、それなりのことは――そう思うだけで今からドキドキしてしまう。
「そ、そうだね」
妙な妄想で声がうわずりそうになるのを堪えて、返事をする。
「もしかして先輩、予定あるんじゃないですか?」
「……えっ!?」
動揺して結局うわずった声を上げてしまうと桃子ちゃんは可笑しそうに口許を緩ませ、ひそひそ声で、
「相手はもしや倉持さんでは?」
と問いかけた。いきなり核心を突いた発言に、私の体は衝撃のあまり固まってしまう。
「私、この間の土曜日、新宿で先輩と倉持さんが手を繋いで歩いているの見ちゃったんです」