エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
それでも環は私を終始エスコートしてくれて、特別な一時を過ごすことが出来た。そして食事を終えた私たちは今、スイートルームに居る。
「ありがとう。こんな素敵な部屋を、私なんかのために用意してくれて」
スイートルームは、二人が泊まるには十分過ぎる程の広さだ。暖色を基調として、いかにも高級そうな間接照明や置物がところどころ部屋に置かれている。
今居る部屋の右隣がベッドルーム、左側がバスルームになっているようだった。
「……なんか、じゃない。梓だから用意したんだ」
少し低めの声でそう言って、環は私の体をそっと引き寄せた。ほんのりと甘くて品の良い香水の匂いがふんわりと鼻をかすめる。
「男の人と初めて過ごすクリスマスが環とだなんて、想像もつかなかった」
環の背中に腕を回し、ネクタイに額を当てた。かつて一度だけ付き合った人とは、クリスマスを過ごさないまま別れてしまった。
それをこの間デートの最中に環にそのことを話したとき、絶対にクリスマスは残業するなと言われた。
そして、環は年末で忙しいはずなだし、定時退社日でもないのに、仕事を無理矢理切り上げて、私のために時間を取ってくれたのだった。
「梓を傷付けた奴に色んなものを取られたから、梓が男と過ごす初めてのクリスマスは俺がもらう。もちろん、これからもずっと」
環は私の腰に腕を回し、頭にそっと唇を当てた。その唇の感触に体の奥がきゅう、と疼く。