エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
「……ありがとう」
 こくりと頷くと、環は私の顎をくいと持ち上げて、真剣な眼差しで私を見た。

「梓の嫌な思い出は、全部俺が上書きする。幸せな思い出にして、もう傷付くことがないようにするから」
 
 縁なしの眼鏡から覗く環の瞳に、小学校5年生の時の面影はなかった。射るように鋭くて熱っぽくて、そのまま吸い寄せられてしまいそうだ。

「もうこれで十分過ぎるくらい、幸せな思い出になったよ」
 私が微笑むと、私たちは自然と唇を重ねていた。

 温かくて、柔らかくて、体の芯がたちまち熱くなっていく。
 口付けが深くなり、身も心も私は環のことで一杯になっていった。

「梓、好きだ。朝まで離さない」
 
 ぞっとするほど艶のある声でそう言われ、私はお姫様抱っこをされるような形で抱きかかえられるとベッドルームまで連れて行かれる。

 環の首に腕を回して、抱き付くと、環は額にそっと口付けしてくれた。

 ――おっ、おい! やめろ、男に抱き付くなんて、おかしいぞ。

 昔、そう言った環はもう居ない。
 幼なじみ、もとい、私の大切な恋人。
 
 ずっと私を想っていてくれて、ありがとう。
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