仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「……私、プライベートの空間に他人が入り込むのは嫌なの」
さすがに、はっきりと愛人を入れるなとは言えなかった。
千夜子について一希と話し合ったことはない。けれどふたりの関係は皆が知っていることだし、一希の態度も彼女が特別だと物語っている。
聞けば傷つくだけだと分かっていた。
「君がそんなに繊細だとは知らなかった。育った家庭は他人の出入りが多かったと聞いているが」
淡々と言い返されて美琴は言葉に詰まった。
その通りだからだ。
実家で暮らしている頃は弟妹の友達が常に出入りしていた。家族が多い分来客も多かった。
「弟達の友達はいい子達だもの。でも彼女は私のことを嫌っているみたいで挨拶すらしないじゃない」
苦し紛れの言い訳が、つい千夜子を責めるようになった。
すると一希はあからさまに顔をしかめた。
「挨拶が必要なら君からすればいいだろう? 君も挨拶をしなかった。礼を欠いた点については千夜子ばかり責められない」
千夜子を庇うその言葉にかっとして、美琴は声を高くした。
「私はあの人から見たら上司の妻でしょ? 普通は自分から挨拶をしない?」
一希はうんざりとした溜息を吐いてから、美琴を冷酷な目で見つめて来た。
「この際だからはっきり言っておく。確かに君とは結婚したが、俺が望んだわけじゃない。夫としての最低限の義務は果たすが、それ以上を要求されても応えるつもりはない」
突き放す言葉に、美琴は息を呑む。
さすがに、はっきりと愛人を入れるなとは言えなかった。
千夜子について一希と話し合ったことはない。けれどふたりの関係は皆が知っていることだし、一希の態度も彼女が特別だと物語っている。
聞けば傷つくだけだと分かっていた。
「君がそんなに繊細だとは知らなかった。育った家庭は他人の出入りが多かったと聞いているが」
淡々と言い返されて美琴は言葉に詰まった。
その通りだからだ。
実家で暮らしている頃は弟妹の友達が常に出入りしていた。家族が多い分来客も多かった。
「弟達の友達はいい子達だもの。でも彼女は私のことを嫌っているみたいで挨拶すらしないじゃない」
苦し紛れの言い訳が、つい千夜子を責めるようになった。
すると一希はあからさまに顔をしかめた。
「挨拶が必要なら君からすればいいだろう? 君も挨拶をしなかった。礼を欠いた点については千夜子ばかり責められない」
千夜子を庇うその言葉にかっとして、美琴は声を高くした。
「私はあの人から見たら上司の妻でしょ? 普通は自分から挨拶をしない?」
一希はうんざりとした溜息を吐いてから、美琴を冷酷な目で見つめて来た。
「この際だからはっきり言っておく。確かに君とは結婚したが、俺が望んだわけじゃない。夫としての最低限の義務は果たすが、それ以上を要求されても応えるつもりはない」
突き放す言葉に、美琴は息を呑む。