仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
一通り話し終えると、慧は頭を抱えてしまった。

「予想より拗れてる」

はあとため息を吐き、慧は呆れた目で美琴を見つめた。
でもその眼差しは決して突き放すものではない。

「もっと早く相談してこいよ」

「だって、こんな話し言い出せないよ。それに慧とはずっと疎遠だったじゃない」

「まあそうだけど、考えてみれば美琴が神楽さんと結婚したから、再会出来たのか」

慧は複雑そうな顔をする。

「そうだよね。私ひとりなら柿ノ木家のパーティなんて行かないし」

祖父が言っていた通り、今頃日々の暮らしを支えるため、休む間もなく働いていただろう。

一希との結婚を悔やんではいるけれど、慧と再会出来たのは良かった。そう思うと人の縁とは不思議だと感じた。

「……ありがとうね、愚痴を聞いてくれて。慧の言っていたようにすごくスッキリした」

状況は変わらなくても、気持ちを吐き出し楽になった。

そんな美琴の言葉に慧は心外だと顔をしかめる。

「なに完結してるんだよ。これから対策を考えるんだろ?」

「え?」

「美琴の状況を放っておけるはずないだろ? 良くなるように協力するから」

美琴は驚き、目を丸くする。

「良くなるって、どうやって?」

「それはまだ決めかねてるけど、まずは話を聞いての俺の感想を言っておくな」

「うん」

少し緊張して美琴は身構えた。
初めて聞く客観的な意見だ。

「どいつもこいつも酷い。しかも日々悪化してるところが凄い。全力で断崖絶壁に向かってる感じがする」

「え……私も?」

「ああ、美琴はやり方が下手過ぎ。今の話の登場人物の中で一番損してる」

はっきり言い切られて、美琴は項垂れた。


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