仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「美琴は今、沢山の問題を抱えているけど、全て何とかしようと考えないで、一つ一つ解決していった方がいいと思う」

「うん……でも、どうすればいいのか分からなくて」

家族との関係を見直しても、やはり幼い弟達を見捨てたくない。

「実家の問題と、神楽さんとの関係は切り離して考えた方がいいんじゃないか?」

「切り離す? でも離婚したらお祖父さんからの援助が無くなって弟達が困るわ。お祖父さんは父と恵美子さんには厳しいけど、それでも弟達の教育費は援助してくれているの。離婚で怒ってそれが無くなると困る」

「幼い弟達は助けないと駄目だ。でもやり方は他にもある。行政からの教育費の補助もあるんだ。美琴の話だと実家はそういったものを利用していないだろ? 習い事もしているみたいだし、はっきり言うけど身分不相応の暮らしをしている」

「うん……」

慧の指摘は当たっている。
父が病気で倒れてからも、恵美子は生活レベルを落とすのを嫌った。

「必要以上に手助けするのは、良くない。美琴に頼れないと分かれば、恵美子さんだって立場を自覚するはずだ」

「そうだよね」

凝り固まっでいた価値観が、少しずつ崩れていくようだった。

「美琴はまずは神楽さんとの関係を解決するんだ。それが落ち着いてから、弟達への関わり方を考えればいい……神楽さんとの暮らしはもう限界なんだろう?」

美琴は躊躇いながらも、結局頷いた。

「限界。一希といると心が醜くなっていくの。言い争いをして相手を恨んで、いつも怒ってばかり。こんなのもう嫌なのに」

結婚する前は関係を修復出来ると信じていた。

けれど、美琴だけの想いでは無理だと理解した。


「私はもういがみ合いたくない。穏やかに暮らしたい」

いつも笑っていられたら……けれど、あの冷え切った家ではその願いは叶わない。

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