仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「一希は私に観原千夜子との愛人関係を否定したの。それなのに誰よりも守りたい相手だと言った。私と彼女が争ったら一希は必ず観原千夜子の味方をして守るんだと感じた」

今更一希の女性関係にどうこう言うつもりはない。
嫉妬する気持ちだって枯れ果てたはずだ。

それなのに、その言葉を思い出すとどうしようもなく落ち込み醜い気持ちが湧いてくる。

観原千夜子が居なければ……そんな考えが頭を過る。

「たとえ愛人関係じゃなくても、特別な間側なのは間違いないな。それにしても自分の妻にそんなことを言うなんて信じられない、神楽さんは何を考えてるんだ?」

慧が顔をしかめる。

「私は名前だけの妻だし、かなり嫌われてるから。傷つけてもなんとも思わないんだよ。一希は観原千夜子を守れたらほかはどうでもいいんじゃないかな?」

自分の口から溢れた事実が虚しくて、溜息を吐く。
すると慧は怪訝な顔をした。

「彼女との関係は本当に恋愛関係じゃないのかもしれないな。そこまで美琴に無神経な態度を取っているのに、それだけ隠す必要がないからな。仮に美琴が彼女を不貞行為で訴えようとしても、神楽さんなら守りきれるだろうから」

たしかに慧が言う通りだ。
美琴が彼女を排除しようと行動したら、一希はその強大な権力と財力を使って妨害してくる。観原千夜子は無傷で美琴は敗北するだろう。

「私もそう思うけど、ほかにどんな関係が考えられる? 友達とは思えないわ」

もし親友なら相手の配偶者を侮辱するはずがない。
観原千夜子の態度は間違いなく美琴を攻撃するものだ。
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