仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
「分からない。観原千夜子については調べた方がいいが、かなり時間がかかりそうだ」

慧が渋い顔をする。

「そうなの？ 慧のお兄さんに聞くのは？」

慧の兄は、一希と千夜子と同級生だ。ある程度の情報は持っているのではないか。
しかし、慧は首を横に振った。

「うちの兄貴は大して交流がなかったし、当たり障りない情報しか持ってない……実は柿ノ木家のパーティーのあと、観原千夜子について軽く探ってみたんだ」

「ええ？ そうなの？」

目を丸くする美琴に、慧は浮かない表情をしてみせた。

「多分、神楽さんが彼女の情報が出回るのを防いでる。もし調査会社に依頼したら直ぐに神楽さんに報告が行く手はずになってるみたいだ」

「……そんなこと出来るの？」

信じられない思いで呟く。

「神楽さんなら可能だ。でも抜け道はあるから時間を使えばある程度は調べられると思う。ただ、そうしたところで美琴の問題が解決するかが問題だよな」

「うん、そうだね。彼女から受けた仕打ちは忘れられないけど、状況を変えるには一希とうまく離婚するのが一番だと思う。でもどうして一希は嫌いな私と離婚しないんだろう」

「美琴のお祖父さんと何かありそうだよな。その辺から調べるか？ 」

慧は今後の段取りを考えているのか、目を細める。

「なあ、神楽さんの母親と観原千夜子の母親は親友だと言っていたな」

「うん。それは義父も知っているみたいだった」

「そうか。それなら美琴のお祖父さんも知っている可能性があるな」

断言する慧に、美琴は首を傾げる。
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