仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「そうかな? お祖父さんと義父は仲がいいみたいだけど、そんな話までするかな」
「もしふたりが親友なら些細な話もするんじゃないか? 美琴の祖父と神楽さんの父親は同年代だ。学生時代からの付き合いかもしれない」
「同年代?」
義父と祖父が同年代など、違和感がある。
しかしよく考えてみれば、義父神楽朗はそろそろ七十歳になる。美琴たちの祖父と言っても不思議はない年齢なのだ。
「昔から交流があるのは知ってたけど、その発想はなかった。お祖父さんが年上だと思い込んでいたし」
「イメージとしてはそうだよな。それで話を戻すけど、神楽さんは観原千夜子との隠しておきたい何かを、美琴のお祖父さんに知られているんじゃないか?」
「一希はその秘密を公表されたくなくて、私と結婚したっていうの? そこまで隠したい秘密ってなに? それに、お祖父さんからみれば一希は親友の息子でしょう? いくらなんでも脅すような真似はしないんじゃないかな?」
自分に置き換えて考えてみる。
何十年かさき、例えば慧の子供の秘密を知ったとして、それをネタに脅そうと思うだろうか。
(有り得ないわ)
それが我が子の幸せの為だとしても、出来ないと思う。
「やっぱりその推理は無理があると思うんだけど」
「でも、神楽さんは美琴のお祖父さんを警戒しているんだろ?」
「それは、そうだけど」
美琴が口籠ったとき、思いがけない声が割り込んできた。