仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「あれ、慧じゃない?」

明るく大きな女性の声。

声の方に視線を向ければ、美琴と同年代と思われる若い女性がこちらの様子を伺っていた。

温かそうなベージュのムートンコートに、ワインレッドのワンピース姿の可愛らしい雰囲気の女性だ。

慧の知り合いらしく、笑顔で近付いてくる。

(あれ? 彼女に見覚えが……)

距離が近くにつれ顔がよく見えてくるのだけれど、懐かしさを感じるのだ。

ついじっと見つめてしまったからか、女性が美琴に目を向けた。

視線が重なると、女性は驚いたように目を丸くする。

その次の瞬間には破顔して、駆け寄ってきた。

「美琴でしょう?」

「えっ? 」

戸惑う美琴に、女性は屈託無い笑顔で言う。

「あれ、分からないの? 鳥崎優香だよ。中二のとき一緒だった」

美琴の脳裏に、学生の頃の思い出が蘇る。
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