仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「待ち合わせて来たんだよ。美琴とも先月再会して最近連絡し合ってるんだ」

「え?」

優香の顔が一瞬強張ったように見えた。
どうしたとかと思っている内に優香は再び愛らしい笑顔になり、慧に一歩近づいた。

「そうなんだ。私はひとりで来てるから、仲間に入っていい?」

「俺たちはもう帰るところだから。鳥崎はちゃんとお参りして来いよ」

慧はさらりと告げると、美琴を促してその場を立ち去ろうとする。

しかし優香が素早く美琴の腕を掴んで来た。

「私もお参り終わったところだから。久しぶりに美琴に会ったんだし、もっと話したい。そうだ、これから飲みに行かない? 三人で新年会やろうよ!」

早口でまくし立てられ、美琴が唖然としていると、優香は悲しそうな目を向けて来た。

「美琴は再会を喜んでくれないの?」

「え? そ、そんなことないよ! 私も優香に会えて嬉しいよ」

ハッとして慌てて弁解すると、優香は満足そうに目を細めた。

「じゃあ、飲みに行ける?」

「うん、あまり遅くはなれないけど」

「良かった。慧もいいよね?」

慧は何か考えている様子だったが、頷くとスマートフォンを取り出した。

「新年会するなら賑やかな方がいいな」

「え? 誰か呼ぶの?」

優香の声が強張る。

慧は頷くと、爽やかな笑顔で美琴を見た。

「美琴も昔の友人に会いたいって言ってたからな」
< 159 / 341 >

この作品をシェア

pagetop