仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
皆、美琴が結婚したと言うと、とても驚いていた。
次々に祝福され、羨ましいと馴れ初めを聞かれる。

夫との関係は良くないとさらりと言えば、一瞬空気が重くなったものの、すぐに切り替え軽い調子で流してくれた。

(なんか……すごく楽)

他愛ないことで声を立てて笑い、思ったままに側から見たらくだらない冗談を言い合う。

そんな時間を過ごしたのはいつ以来だろう。

お腹が痛くなるほど笑っていると、時間の流れを忘れていた。


楽しいおしゃべりは尽きなかった。

だんだんと遠慮がなくなり、「美琴なんか地味。もうちょっとメイクとかファッション研究しなよ」などと忌憚のない意見をされる。

「ヤケに真面目な感じに見えるのは、髪をキツくまとめ過ぎだからじゃない?」

都心のヘアサロン勤務の友人が言い、美琴の髪を結い直してくれる。

鏡を渡され見ると同じハーフアップでも印象が大分違っていた。

自分でやった時より、ふんわりとしていて自然なのだ。

「ほんとだ、こっちの方がいい。私の結き方変だったのかな?」

「うちのサロンに来なよ。元はいいんだからかなり変身するよ。あっ、連絡先交換しよ」

友人は何の気負いもなくスマートフォンを取り出して言う。

アドレス交換自体が滅多にない美琴はドキドキしながら、喜びを感じていた。
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