仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
第二章 幼馴染
美琴はひとりで母屋に行き、帰宅の挨拶を済ませた。
新居に戻ってからは、特にやることもないのでぼんやりとして過ごす。
夕方になり食事をどうすればいいか悩んだ末、冷蔵庫に用意されていた材料を使ってふたり分を作った。
和食がいいかと考えたけれど、出汁を取れそうなものがなかったので、昔一希が大好物だと言っていたビーフシチューとパンとサラダを用意した。
(喜んでくれるといいけど……足りないものは、明日買いにいこう)
一希は夜になっても帰って来なかった。
電話もメッセージもない。
ずっと待っていた美琴は、夜の十一時を回った時点で諦めひとりで食事をした。
広いテーブルでひとりの食事は寂しくて、悲しみが胸に広がっていく。
片づけと入浴を終えると、ひとりでベッドに入り眠りについた。
朝、七時に目が覚め、部屋を見回すと隣のベッドを使った気配があった。
急ぎリビングに行くと、一希がシャワーを済ませたところのようだった。
(いつ帰ってきたんだろう。全然気づかなかった)
「おはよう」
昨日の件があって気まずかったけれど、笑顔で挨拶をする。
一希は無表情のまま「ああ」と言う。
素っ気ないけれど無視されるよりはましだ。
「すぐに朝ごはん用意するね」
「必要ない」
「え?」
「もうすぐ出る。朝食は打合せを兼ねて千夜子たちと取る」
淡々と言われたその言葉が、鋭く胸に突き刺ささる。
「そうなの……あっ、でも、昨日ビーフシチューを作ったの。結構上手に作れたから少しでもどうかな?」
一緒に食事をする時間まで観原千夜子に取られると思うと、居ても経ってもいいられない気持ちになった。けれど、
「俺の事は構わないでいい。それにビーフシチューは嫌いなんだ」
一希の冷たい言葉に、それ以上何も言えなくなってしまった。
記憶の中の優しかった彼は、もうどこにも見つけられなかった。
新居に戻ってからは、特にやることもないのでぼんやりとして過ごす。
夕方になり食事をどうすればいいか悩んだ末、冷蔵庫に用意されていた材料を使ってふたり分を作った。
和食がいいかと考えたけれど、出汁を取れそうなものがなかったので、昔一希が大好物だと言っていたビーフシチューとパンとサラダを用意した。
(喜んでくれるといいけど……足りないものは、明日買いにいこう)
一希は夜になっても帰って来なかった。
電話もメッセージもない。
ずっと待っていた美琴は、夜の十一時を回った時点で諦めひとりで食事をした。
広いテーブルでひとりの食事は寂しくて、悲しみが胸に広がっていく。
片づけと入浴を終えると、ひとりでベッドに入り眠りについた。
朝、七時に目が覚め、部屋を見回すと隣のベッドを使った気配があった。
急ぎリビングに行くと、一希がシャワーを済ませたところのようだった。
(いつ帰ってきたんだろう。全然気づかなかった)
「おはよう」
昨日の件があって気まずかったけれど、笑顔で挨拶をする。
一希は無表情のまま「ああ」と言う。
素っ気ないけれど無視されるよりはましだ。
「すぐに朝ごはん用意するね」
「必要ない」
「え?」
「もうすぐ出る。朝食は打合せを兼ねて千夜子たちと取る」
淡々と言われたその言葉が、鋭く胸に突き刺ささる。
「そうなの……あっ、でも、昨日ビーフシチューを作ったの。結構上手に作れたから少しでもどうかな?」
一緒に食事をする時間まで観原千夜子に取られると思うと、居ても経ってもいいられない気持ちになった。けれど、
「俺の事は構わないでいい。それにビーフシチューは嫌いなんだ」
一希の冷たい言葉に、それ以上何も言えなくなってしまった。
記憶の中の優しかった彼は、もうどこにも見つけられなかった。