仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
定時後の午後六時過ぎ。
千夜子が執務室に入室した。
「改まって話ってどうしたの?」
今日の千夜子は機嫌が良かった。
にこにことしながら来客用のソファーに座り、ほっそりとした足を組む。
いつものタイトなスーツ姿ではなく、華やかなワンピースを身に着けていた。
「出かける予定があったのか?」
一希が問いかけると、千夜子は首を横に振った。綺麗な巻き髪がフワリと揺れる。
「ちょっとストレス解消に行こうかと思ったけど、キャンセルしたから大丈夫よ」
「そうか、急に悪かったな」
「いいのよ。でも勿論良い話でしょう?」
千夜子は期待の目で一希を見つめる。
「そうだな……千夜子に昇進して貰うことにした」
「昇進? 第一秘書をどこかにやれることになったのね?」
弾んだ声が執務室に響く。千夜子は以前から自分が第一秘書になりたいと言っていた。
望みが叶ったと喜んだのだろう。
その様子に気まずさを覚えながらも一希は口を開いた。
「いや、千夜子には課長として経営企画部に異動して貰いたい」
経営企画部課長は神楽グループ本部内でも、かなり重要なポストだ。
第二秘書からの抜擢は、この上ない栄転と言えるだろう。しかし千夜子は驚愕したように目を瞠った。
「どうして? 私は一希の秘書がいいって言ってたでしょう?」
「だが今のままでは千夜子の実力が発揮できない。経営企画部はこの会社の中心で千夜子に相応しい部署だろう?」
「そうだけど……でも嫌よ。その話は進めないで。私は秘書を辞める気はないわ。昇進するなら第一秘書よ」
良かれと思い、苦心して調整した人事を千夜子はあっさりと蹴る。
一希は落胆して目を伏せた。
そんな一希に千夜子は更に言い募る。
千夜子が執務室に入室した。
「改まって話ってどうしたの?」
今日の千夜子は機嫌が良かった。
にこにことしながら来客用のソファーに座り、ほっそりとした足を組む。
いつものタイトなスーツ姿ではなく、華やかなワンピースを身に着けていた。
「出かける予定があったのか?」
一希が問いかけると、千夜子は首を横に振った。綺麗な巻き髪がフワリと揺れる。
「ちょっとストレス解消に行こうかと思ったけど、キャンセルしたから大丈夫よ」
「そうか、急に悪かったな」
「いいのよ。でも勿論良い話でしょう?」
千夜子は期待の目で一希を見つめる。
「そうだな……千夜子に昇進して貰うことにした」
「昇進? 第一秘書をどこかにやれることになったのね?」
弾んだ声が執務室に響く。千夜子は以前から自分が第一秘書になりたいと言っていた。
望みが叶ったと喜んだのだろう。
その様子に気まずさを覚えながらも一希は口を開いた。
「いや、千夜子には課長として経営企画部に異動して貰いたい」
経営企画部課長は神楽グループ本部内でも、かなり重要なポストだ。
第二秘書からの抜擢は、この上ない栄転と言えるだろう。しかし千夜子は驚愕したように目を瞠った。
「どうして? 私は一希の秘書がいいって言ってたでしょう?」
「だが今のままでは千夜子の実力が発揮できない。経営企画部はこの会社の中心で千夜子に相応しい部署だろう?」
「そうだけど……でも嫌よ。その話は進めないで。私は秘書を辞める気はないわ。昇進するなら第一秘書よ」
良かれと思い、苦心して調整した人事を千夜子はあっさりと蹴る。
一希は落胆して目を伏せた。
そんな一希に千夜子は更に言い募る。