仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「……なあ、俺からも話があると言っただろ?」

慧が美琴の話に返事をしないまま話題を変えるのは珍しい。

「うん、何かあったの?」

意外に感じながら相槌を打つと、慧は言いづらそうに、けれど口を開けばはっきりと言った。

「以前、観原千夜子について調べるって言ってただろ?」

「うん、何か分かったの?」

「ああ、美琴達は上手くいきそうだから調査も必要ないかと思った矢先、気になることが分かったんだ」

慧は浮かない表情で言う。

「何が分かったの?」

「神楽さんは観原千夜子にかなりの財産を贈与しているようだ」

「え? お金を渡しているってこと?」

慧は首を横に振った。

「現金だけじゃない。神楽家所有だったある土地の名義が観原千夜子になっている」

「土地? うそ……」

それは友人を援助するレベルの資産ではない。

(どうして?)

一希は千夜子は愛人ではないと言い切った。

最近の態度から、美琴もその言葉を半ば信じかけていた。

けれど、資産を譲るなどまるで愛人に対する対応ではないか。

(愛人じゃなくても特別な人。一希は彼女を守りたい人と言っていた……それはお金でもってこと?)

「それらしい様子はなかったか?」

「分からない。私は一希の資産がいくら有るのかも知らないから。お給料さえ分からない。毎月決まった額を貰って生活しているの」
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