仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
自宅に戻ると部屋の掃除と夕食の下準備。それから自室で別居に向けての荷物の整理をした。
と言っても元々荷物が少ないので、大した手間はかからない。

そう言えば婚約期間も結婚期間も、一希に何かを贈ってもらったことは殆どなかった。

唯一結婚指輪を貰ったが、一緒に買いに行った訳でも美琴の好みを聞かれた訳でもない。
恐らく誰かに選ばせたのだろう。

美琴は律儀に着けているけれど、一希が指輪をしているところを見たことがない。
まさか捨てていないとは思うが。

片付けも終わり手持無沙汰になった頃、一希が帰って来た。



「お帰りなさい」

玄関に出迎えると一希は穏やかに微笑んだ。

「ただいま」

「今日は、和食にしたんだ。最近は一希の好きなお子様メニューが多かったから」

ハンバーグ、オムライス、クリームシチューと続いていた。

「お子様メニュー?」

一希は怪訝な表情で立ち止まる。

「なんでもない、着替えて来るんでしょう?」

「ああ」

一希は何か言いたそうにしながらも、美琴に背を押されるまま寝室へ行く。

彼が着替える間に、手早くテーブルを整えた。
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