仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「私たち、最近よく話すようになったね」

「ああ」

「初めからこうやって穏やかに会話出来たら離婚にはならなかったのかな?」

「…………」

答えない一希に、美琴は苦笑いをした。

「一希は無口だって前から思ってたけど、言い辛い返事だから黙ってるの? どんなに上手く生活していたとしても私とは離婚した?」

一希は何か言いたそうにする。しかし言葉が出てこないようだ。

「私と結婚したのは久我山のお祖父さんに何か言われたからだよね? その件はもう大丈夫なの?」

未だにその内容を教えては貰えないが、一希と祖父の間で解決しているのだろうか。

「それは大丈夫だ。心配しなくていい」

「そう……私の方も大丈夫。お祖父さんは私に早く結婚して幸せになって欲しかっただけで跡継ぎとかは口実だったみたいだから」

「そうか」

一希が相槌を打つと会話が終わってしまった。けれど一彼が席を立つ様子はない。

「……別居のこと、観原さんには言ったの?」

「ああ」

予想はしていた返事だけれど、改めて失望した。


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