仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
(やっぱり一希は観原千夜子とは離れられないんだ)
「彼女、私がいなくなるって知って、喜んでいるんじゃない?」
ついそんな言葉が口から零れる。
するとそれまで言葉少なだった一希が、はっきりと言った。
「千夜子は俺の秘書を外れた。今では用が無い限り顔を合わさない。千夜子が別居を聞いてどう感じているのかは聞いていないし聞く気もない。別居も離婚も俺と美琴の問題で千夜子は関係ない」
「関係ないって……私はそんな風に思えないよ」
一希との仲が拗れたのは千夜子の存在が原因だ。穏やかになった今も完全に心を開けないのは、一希と千夜子の特別な関係を何度も目の当たりにしているから。
義母だってふたりの結婚を望んでいるのだ。
「あの人は一一希と結婚したいと思っているんじゃないの?」
「美琴、俺は離婚したあと、千夜子とも他の誰とも再婚する気はない」
「え?……まさか、そんなの無理だわ。だって一希には後継者が必要でしょう?」
「…………」
一希は再び黙り込む。
きっと美琴には答えられない事情があるのだろう。
(どうして再婚しないの? それとも私にそう言っているだけ?)
もっと聞きたかったけれど、一希が答えないのも予想していた。
それから深い話をする機会もないまま、週末に美琴は神楽家の住まいを出た。
「彼女、私がいなくなるって知って、喜んでいるんじゃない?」
ついそんな言葉が口から零れる。
するとそれまで言葉少なだった一希が、はっきりと言った。
「千夜子は俺の秘書を外れた。今では用が無い限り顔を合わさない。千夜子が別居を聞いてどう感じているのかは聞いていないし聞く気もない。別居も離婚も俺と美琴の問題で千夜子は関係ない」
「関係ないって……私はそんな風に思えないよ」
一希との仲が拗れたのは千夜子の存在が原因だ。穏やかになった今も完全に心を開けないのは、一希と千夜子の特別な関係を何度も目の当たりにしているから。
義母だってふたりの結婚を望んでいるのだ。
「あの人は一一希と結婚したいと思っているんじゃないの?」
「美琴、俺は離婚したあと、千夜子とも他の誰とも再婚する気はない」
「え?……まさか、そんなの無理だわ。だって一希には後継者が必要でしょう?」
「…………」
一希は再び黙り込む。
きっと美琴には答えられない事情があるのだろう。
(どうして再婚しないの? それとも私にそう言っているだけ?)
もっと聞きたかったけれど、一希が答えないのも予想していた。
それから深い話をする機会もないまま、週末に美琴は神楽家の住まいを出た。