仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「明日は休みにした」
「あ、そうなんだ……あの、私もその方がいいと思う。今夜と明日ゆっくり休んでね」
予定を教えてくれた事に驚いてしまい、しどろもどろな返事になる。
せっかくの会話も流暢に出来ない自分を情けなく思いながら寝室を出ようとした時、再び声をかけられた。
「美琴」
ドアノブに伸ばしていた手をピクリと止めた。
幼い頃を除いて、一希にまともに名前を呼ばれたのは初めてだったのだ。
まさかと思い振り返ると、一希と目があった。
「……それ、美味かった。手間をかけさせたな」
予想もしていなかった言葉に、美琴は大きく目を見開く。
「こ、こんなの……手間じゃないよ。一希に早く治って欲しいから……あの、他にも何か必要だったら遠慮なく言ってね」
早口で言うと、美琴はぎこちない動きで寝室を出た。トレイを持つ手が震えている。
一希が笑顔を向けてくれたわけじゃない。
人に何かをして貰ったら、お礼を言うのは当たり前だから、彼は礼儀を通しただけだろう。
だけど、一希のくれた言葉は美琴にとって、何より嬉しいもので、涙が溢れそうになる。
思いがけない出来事に、鼓動が早くなるのを止められなかった。
「あ、そうなんだ……あの、私もその方がいいと思う。今夜と明日ゆっくり休んでね」
予定を教えてくれた事に驚いてしまい、しどろもどろな返事になる。
せっかくの会話も流暢に出来ない自分を情けなく思いながら寝室を出ようとした時、再び声をかけられた。
「美琴」
ドアノブに伸ばしていた手をピクリと止めた。
幼い頃を除いて、一希にまともに名前を呼ばれたのは初めてだったのだ。
まさかと思い振り返ると、一希と目があった。
「……それ、美味かった。手間をかけさせたな」
予想もしていなかった言葉に、美琴は大きく目を見開く。
「こ、こんなの……手間じゃないよ。一希に早く治って欲しいから……あの、他にも何か必要だったら遠慮なく言ってね」
早口で言うと、美琴はぎこちない動きで寝室を出た。トレイを持つ手が震えている。
一希が笑顔を向けてくれたわけじゃない。
人に何かをして貰ったら、お礼を言うのは当たり前だから、彼は礼儀を通しただけだろう。
だけど、一希のくれた言葉は美琴にとって、何より嬉しいもので、涙が溢れそうになる。
思いがけない出来事に、鼓動が早くなるのを止められなかった。