仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「美琴さん? そこにいるのか?」
そう言いながら現れたのは、初老の男性。
一希の父親である神楽朗(カグラアキラ)だった。
彼は一希とは四十歳程年が離れているので、そろそろ七十歳。体力の衰えが著しく、三年前に現役を引退していた。
普段は母屋でのんびりと趣味の盆栽を楽しんでいる。
美琴との関係は可もなく不可もなくと言うところだ。
「お義父さま、何かありましたか?」
義父が離れに来るのは初めてだ。
「珍しく一希が体調不良で仕事を休んでいると聞いてね。様子を見に来たんだ」
親子関係は希薄かと思っていたから意外だった。
「そうなんですね、一希さんは今寝室に居ますが……」
義父を部屋に通すのは当然だけれど、千夜子をどうしようか悩んでしまう。
すると義父はようやく千夜子の存在に気付いたようで、少し驚いた顔をした。
「君は……一希の第二秘書だったかな?」
「はい。観原千夜子と申します」
千夜子は、美琴に対するものとは正反対の礼儀正しい態度で頭を下げた。
その様子を美琴は不思議な気持ちで眺めていた。
(彼女とお義父さんは、個人的には面識がないの?)
義父の千夜子に対する認識は、息子の部下で、ふたりの関係を全く把握していないようだった。
そう言いながら現れたのは、初老の男性。
一希の父親である神楽朗(カグラアキラ)だった。
彼は一希とは四十歳程年が離れているので、そろそろ七十歳。体力の衰えが著しく、三年前に現役を引退していた。
普段は母屋でのんびりと趣味の盆栽を楽しんでいる。
美琴との関係は可もなく不可もなくと言うところだ。
「お義父さま、何かありましたか?」
義父が離れに来るのは初めてだ。
「珍しく一希が体調不良で仕事を休んでいると聞いてね。様子を見に来たんだ」
親子関係は希薄かと思っていたから意外だった。
「そうなんですね、一希さんは今寝室に居ますが……」
義父を部屋に通すのは当然だけれど、千夜子をどうしようか悩んでしまう。
すると義父はようやく千夜子の存在に気付いたようで、少し驚いた顔をした。
「君は……一希の第二秘書だったかな?」
「はい。観原千夜子と申します」
千夜子は、美琴に対するものとは正反対の礼儀正しい態度で頭を下げた。
その様子を美琴は不思議な気持ちで眺めていた。
(彼女とお義父さんは、個人的には面識がないの?)
義父の千夜子に対する認識は、息子の部下で、ふたりの関係を全く把握していないようだった。