仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「元気はあるけど、なかなか熱が下がらなくて……でも病院にはまだ行けてないの。全員を連れて行くのは無理で」

「そう。じゃあ今から行こう? タクシーを二台呼べばなんとかなるわ。恵美子さんも診てもらった方が良さそうだし」

「ええ……ありがとう美琴ちゃん」

「子供たちの支度をしないとね」

生活スペースの間取りは、十四畳のリビングに、四畳半から六畳の個室が四部屋。
父たち夫婦が一部屋を使い、残り三部屋を子供たちで分けていた。

人数の割に狭い。子供部屋の扉を開けると布団をぎゅうぎゅうに敷いた部屋で、パジャマ姿の男の子たちが、テレビを見ていた。

「あっ! お姉ちゃん?」

美琴に気付くと、一番年上の弟の陸が立ち上がり駆け寄ってくる。

続いて、二番目の弟の海と、三番目の弟の空もやって来た。

「お姉ちゃん、帰って来たの?」

まだ小学校低学年の子供といえど、三人がかりで抱きつかれると、よろけてしまう。

「三人とも落ち着いて。みんなが風邪をひいたって聞いたからお見舞いに来たのよ」

「ええ……じゃあ、また帰っちゃうんだ」

しょんぼりされると、胸が痛む。
同時にじんわりと嬉しさがこみ上げる。

(この子たちは私のことを必要としてくれている)

一希に必要ないと拒絶されたせいか、無邪気に慕ってくれる弟たちの言葉が心に染みる。

「夜になったら帰るけど、みんなが良くなるまで昼に来るからね」

連日外出しては神楽家の人たちに何か言われるかもしれないとチラリと考えたけれど、それよりも家族の役にたちたい気持ちが強かった。

「今から病院に行って先生に診て貰おうね」

「うん!」

子供達は自分で着替えを始める。
男の子たちは一番下の空でも七歳で、小学生になっている為、ある程度のことは自分で出来る。

問題は三つ子の妹たちだった。
彼女たちはまだ三歳なので、何事もフォローが必要だ。
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