毒林檎
私の名前は吉岡まい。25歳。
地元の私立大学を卒業して今の会社で働くようになって3年目。
なんとなくで就職した今の会社で営業をしている。
営業の先輩の中にいたのが彼だった。
彼の名前は竹村祐希。36歳。
たまたまだが出身大学は私と同じ。
転職を繰り返して今の会社に来たらしいが、それでも私よりはベテラン。
妻子持ちでお子さんは小学生の女の子と男の子がひとりずつ。
私が知っている彼の情報はたかだかこんなもの。
最初は正直ヤンキーのような雰囲気があり苦手だった。
高圧的な物言いに声を掛けられる度にヒヤヒヤしていた。
いつからだろうか、彼のその言葉の裏には優しさがあることを知った。
営業が辛く悩んでいるときに一番に気付いてくれるのは彼だった。
若手社員の中でも彼は言動と裏腹に優しいと噂が立つほどであった。
その優しさも決して平等というわけではなく、彼が認めるような仕事をしていなければ貰えないことにも気付いた。
気付いたと同時に私は彼のために仕事をするようになっていた。
その優しさを貰いたくて。