「桐生さんは、いいんですか?
本っ当に、うちの家族めんどくさいですよ?」

「大丈夫ですよ。
逃げて隠れて付き合っても、いずれは
越えなきゃいけない壁ですから、今から
ぶつかっておきます。」

そう言って、桐生さんは笑う。

「じゃあ、伊藤課長に聞いておきます。
小川本部長の扱いにおいては、伊藤課長の
右に出る者はいませんから。」

私がくすりと笑うと、桐生さんも笑った。

ワインを3杯ほど飲んだところで、桐生さんがスーツの内ポケットから、何かを取り出した。

「実は、今日は、これを渡したかったん
です。」

私は、細長いベルベットのその箱を見て、戸惑う。

これはきっと貴金属。
多分、ネックレス。

友人がもらっていい物じゃないし、私は何もプレゼントを用意してない。
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