私は席に戻り、桐生さんにお礼を言う。

「すごく素敵です。
ありがとうございます。」

私がぺこりと頭を下げると、桐生さんは、

「喜んでもらえてよかったです。」

と切れ長の目を細めて微笑む。

私がまた桐生さんの隣に座ると、音楽を楽しむ人を邪魔しないように、身を寄せて囁くように話しかけてくる。

「栗原さんは、年末年始はどうされる予定
ですか?」

私はこの距離感に慣れなくて、やっぱりドキドキしてしまう。

「あの、年末年始は、名古屋に帰る予定
です。」

「そうですか。
初詣とか一緒に行けたら…と思ったんですが、
帰省なら仕方ありませんね。
戻っていらっしゃったら、また会って
いただけますか?」

「はい。」

「じゃあ、行きたいところ、考えておいて
ください。」

「はい。」

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