仁くん、私、気付いたよ。

ちゃんと、気付いたよ。

だけどね、ダメなの。

子供の頃からの私の夢は、SEでもピアニストでもなく、ただの普通のお母さんなの。

子供のために一生懸命愛情を尽くして、旦那様と寄り添って、暖かい家庭を築く、そんなお母さんなの。

仁くんとじゃ、それはできないの。

お父さんが演奏旅行で一年中いないのは、嫌なの。

離れてる間に、仁くんが他の人を好きになったら、耐えられないし、子供がお父さんの顔を忘れちゃうような家族は嫌なの。

仁くん…

私は、なんで仁くんの事を好きになっちゃったんだろう。



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