絆
目の前のホームに、新幹線が到着しては、人を吐き出し、飲み込み、去っていく。
そんな新幹線を何本か見送りながら、思い悩んでいると、
「絆!」
背後から、大好きな声がした。
キャリーケースをガラガラと音を立てながら引いて、仁くんが駆け寄ってくる。
「仁くん。」
私が呼ぶのと同時に、仁くんはふわりと私を抱きしめた。
「絆、会いたかった。」
仁くんの温もりが私の心をあたためて溶かしていく。
「仁くん、好き… 」
気づけば私は絶対言わないと決めてた言葉を口から零していた。
「絆?」
仁くんに呼ばれて、はたと気付く。
どうか聞こえていませんように。
私は仁くんの胸に顔を埋めて隠した。
「絆、もう一度言って。」
「……… 何も言ってないよ。」
私はとぼける。
「ふっ
絆の嘘つき。」
仁くんはそう言うと、私を抱きしめる腕に力を込めた。