「俺は、別にいいんだけど、写真とか撮られて
絆を晒し者にしたくないから。」

仁くん…

「私は大丈夫だよ。
仁くん、気にしないで。」

私たちは、エレベーターに乗り、仁くんが36階を押す。


「どうぞ。」

仁くんがドアを開けてくれて、私を中に入れてくれる。

「ぅわぁ! 何これ!?
仁くん、すごい部屋だね。」

「くくっ
ほんとだな。」

「高いんじゃないの?」

「いや、俺は、今朝、普通の部屋を予約
したよ。
そしたら、正月で満室だって言うから、最後の
手段で名乗ったら、
『大丈夫です。なんとかします』
って言われて、勝手にこうなった。」

「ピアニスト春山仁を普通の部屋には
泊められないって思ったんじゃないの?」

「普通の部屋で十分なのにな。
さ、絆、何食べる?」

仁くんが、ホテル案内のルームサービスメニューを広げる。

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