「仁くんが食べたいのでいいよ。」

「じゃあ、フレンチでいいかな?
ワインは飲む?」

「仁くんは?」

「俺はやめとく。
絆を送ってかなきゃいけないし。」

「え? そんなの、いいのに。
名古屋は私の地元だもん。
ちゃんとひとりで帰れるよ?」

私が言うと、

「夜だし、何かあったら…と思うと俺が
落ち着かないから、送ってく。」

仁くんはきっぱりと言い切るから、それ以上、何も言えなかった。

仁くんが飲まないのに、私だけ飲むのもつまらないから、ワインはやめて食事だけ楽しむ事にした。

もちろん、一流ホテルのフレンチは、とてもおいしかったけど、それはもしかしたら、仁くんと一緒だから余計にそう思ったのかもしれない。

「絆、明日は予定ある?」

食後、ソファーに並んで、仁くんが尋ねる。

「ううん。明日はのんびりするか、初詣にでも
行くか、迷ってたとこ。」

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