「絆?」

仁くんが、俯く私の顎に長い指を添えて、顔を上げさせる。

顔を上げると、目の前に仁くんの綺麗な顔があった。

もうドキドキが止まらない。

私は、恥ずかしくて目を逸らしたいのに、仁くんに顎を支えられてるから、動かせない。

私は最後の手段でぎゅっと目を閉じた。

これで仁くんを見なくて済む。

ドキドキとうるさい鼓動を感じながらも、束の間の安堵と安らぎを感じ…た…のは、ほんの一瞬だった。

一瞬のち、私の唇に柔らかな温もりが落とされた。

な…に?

何が起きているのか理解するのに要した時間は、一瞬だったような気もするし、永遠のように長い時間だったような気もする。

それがキスだと気づいた時、驚いた私は、目を開けた。

だけど、私の眼前には、目を閉じた綺麗な仁くんの顔があるばかりで、視界は全て仁くんに覆われていた。

私は、慌ててもう一度目を閉じる。
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