何?
どうして?

私はパニックに陥る。

焦る私を残して、仁くんの唇が離れた。

くすっ

仁くんが笑みを零す音が聞こえる。

私がそっと目を開けると、開ききる前に、仁くんに抱き寄せられた。

私の心臓は壊れそうな速さで鼓動する。

私の頭の中では、Prestissimo(プレスティッシモ:非常に速く)という音楽用語がぐるぐる回っていた。

「絆、好きだよ。
もう離れたくない。」

仁くんの声が、抱き寄せられた仁くんの胸を伝って直接響いてくる。

直接伝わると、なぜか胸の真ん中にストンと言葉が落ちる。

「ん…」

私は返事ともつかない微かな声を上げると、ふっと体の力が抜けて、仁くんに体を預けた。

仁くんの温もりが心地いい。

ずっとこのままでいたいくらい。

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