だけど、仁くんは腕を緩めた。

「ずっとこうしてたいけど、あんまり遅く
なるとご両親が心配するから、
そろそろ送るよ。」

仁くんが私の顔を覗き込んで言う。

目が合った瞬間に、ぼわっと顔が沸騰するのを感じた。

さっき、私… 仁くんと…

恥ずかしくて、仁くんを見られない。

私は、また俯いてしまった。

仁くんは立ち上がると、フロントへ電話する。

「タクシーを1台呼んでいただけますか?」

電話を終えると、仁くんは何も言わず、私の手を引いて立たせてくれる。

「絆、行こうか。」

私は、こくんと頷いて仁くんに従った。


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