エントランスを抜けると、ドアマンに声を掛けられる。

「春山様ですね?
タクシーが到着しております。」

タクシーのドアが開き、私は、

「仁くん、会えて嬉しかった。
ごちそうさま。」

と言って、そのまま乗り込む。

ところが、

「絆、奥に詰めて。」

と仁くんが乗り込んできた。

「えっ!?
仁くん、タクシーなら送って
もらわなくても帰れるよ。」

私は焦って言う。

だけど仁くんは、

「俺がもう少し、絆と一緒にいたいの!」

と言って、当然のように私の隣に座り、私の手を握る。

だから私は、また恥ずかしくなって俯いてしまった。



正月2日の夜は、道も空いていて、15分程で自宅に到着した。

仁くんが降りて、続いて私が降りる。

すると、仁くんが運転手さんに話しかける。

「すぐに戻ってくるので、少し待ってて
ください。」

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