「くくっ
相変わらず、絆は迷宮入りしてるの?」

仁くんが私の肩を抱いて聞く。

「め、迷宮入りなんて…」

「してない?
じゃあ、何、考えてた?」

「なんで仁くんはこんなに近くても平気なの
かな…とか、仁くんはドキドしないのかな…
とか。」

「うん。それで?」

「仁くんは、大人だし、モテるし、慣れてる
んだろうなって… 」

思ってた事を口にした瞬間、なんだか心がささくれ立った気がした。

仁くん、他の女の人ともこういう事したんだ。

他の誰かに、この綺麗で繊細な指で触れたんだ。

他の誰かに「好き」って言ったんだ。

「絆、俺と再会してから、何を聞いてた?」

仁くんの声が少し悲しそうで、少し怒ってるみたいで、それから、少し傷ついてるみたいで、私はなんだか悪い事をしたみたいな気分になった。
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