仁くんは、それを見てから、ピアノの前に座ると、深呼吸を一つして、いきなり曲を奏で始めた。

これは…ショパン!!
『ワルツ第13番 変ニ長調』

繊細な優しい音色に想いが溢れる。

仁くんのピアノが、私を好きって言ってくれてる。

仁くんの想いが、私の胸を打つ。

ショパンが終わると、一呼吸置いて、次の曲を奏で始める。

これ…は…

忘れもしない。

『絆』だ。

仁くんが作ってくれた、私だけの曲。


どうしよう。

また、涙が止まらない。

仁くん… 仁くん…

私も、仁くんのこと、大好き…

仁くんに初めて会った中学生の時から、ずっと仁くんが大好き。

私、なんで今まで気づかなかったんだろう。

こんなに好きなのに。


演奏を終えた仁くんが、私にハンカチを差し出す。

私がそれを受け取るのをためらっていると、仁くんはそっとそのハンカチを私の頬に押し当て、涙を拭ってくれた。

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