ホームに降り立つと、人波が階段に向かって流れていく。

いっそ、このまま流されて、会えなかったふりをして帰ってしまおうかと思った。

だけど…

「絆さん!」

はぁ…

どうしよう。

元来、外面のいい私は、咄嗟に笑顔を貼り付ける。

「わざわざ来ていただいて、すみません。」

人波から外れて、章吾さんに向き合う。

「いえ、全然。
絆さん、明けましておめでとうございます。」

章吾さんは、にこやかに微笑む。

「あ、明けましておめでとうございます。」

「絆さん、これからどうされます?
まっすぐ帰られますか?
どこか寄られますか?」

章吾さんはどこかへ行きたいんだろうな。

でも…

「家族が待ってるので帰ります。」

「分かりました。
じゃあ、送ります。」

章吾さんは私に並んで歩き始める。

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