絆
そんな事を言われても、専務に凝視されて通常通り仕事ができる人がいたら、教えてほしい。
百歩譲って、海翔くんが専務じゃなかったとしても、父親に凝視されて仕事ができる人もそうはいないと思う。
私は、10分ほど頑張ったが、ため息をひとつ吐いて諦めた。
「はぁ…
全然、集中できない。
今日は、もうやめる。」
私が、端末の電源を落とそうとすると、海翔くんが私の手を押さえた。
「絆、待って。
電源を落とす前に、
もう一度確認してごらん。」
「え? 何?」
「そこ、ループしてるよ。
電源を落とす前に、
そこだけ修正した方がいい。」
「え!?」
私が振り返ってみると、確かに出口のない繰り返し命令があった。
「あ、ありがとう! 海翔くん。」
私はお礼を言って、慌てて出口となる条件文を追加する。
私は、身の回りを片付けて、席を立った。
「お先に失礼します。」