家に着いたので、私は章吾さんにお礼を言う。

「今日はわざわざありがとうございました。」

「いえ、俺が会いたかっただけですから。
最近、ダメなんです。
寝ても覚めても、絆さんに会いたくなって。」

「私は章吾さんにそんな風に思ってもらえる
ような人間じゃありませんよ。」

想ってもらっても、想いを返せないって、辛い事だったんだな。

「そんな事ありませんよ。
絆さんと出会って、まだひと月も経って
ませんけど、絆さんの人柄は、最初に聞いた
ピアノに全て表れてたと思います。
絆さんと話してみて、接してみて、
『ああ、やっぱり』
と思う事が多いですから。」

「そう…ですか?」

< 160 / 318 >

この作品をシェア

pagetop