分かってる事は、ただひとつ。

結婚できなくても仁くんが好きって事。

人の気持ちって、厄介なものだったんだね。

仁くんじゃダメだって分かってても、好きな気持ちは消えてくれない。

なんでなんだろう。


だけど、いつまでも悩んでばかりいる訳にもいかず、仕事初めを迎え、章吾さんと約束したジャズバーに行く金曜日がやってきた。

また、19時に1階ロビーで待ち合わせる。

私は今日こそはと思い、早めに1階に下りる。

だけど、15分前のロビーで見つけたのは、壁にもたれて読書する章吾さんの姿だった。

なんで…?

いつもこんなに早くから待っててくれたの?

「章吾さん。」

声を掛けると、章吾さんは顔を上げて、優しく微笑む。

「絆さん! 今日は早いんですね。」

章吾さんが嬉しそうに駆け寄ってきた。

< 164 / 318 >

この作品をシェア

pagetop