こんなに喜んでくれてるのに、私は今からこの人を断るんだ。

そう思うと、なんだか心苦しくなる。

「絆さん、どうかさんましたか?」

章吾さんが心配そうに私の顔を覗き込む。

「いえ、なんでも。
行きましょうか。」

私たちは連れ立って、また、あのジャズバーへ向かう。

今回は窓際の席。
ジャズバンドには背を向け、夜景を眺められる。

「きれい…」

海翔くんが結ちゃんに告白したのは、この席だったのかな。

「絆さんの方が綺麗ですよ。」

章吾さんが耳元で囁く。

「くくっ
すみません。
お酒を飲む前に絆さんを赤くさせてしまい
ました。」

そんな事、わざわざ言わなくても…

恥ずかしくなった私は章吾さんから顔を背けた。

「そういえば、絆さんは、どうしてここに
来たかったんですか?」

「え?」

< 165 / 318 >

この作品をシェア

pagetop