「最初に誘った時に言ってましたよね?
ここに行ってみたかったって。
誰かから聞いたんですか?」

「………宮本専務に。」

「宮本専務?
専務に連れてきては
もらわなかったんですか?」

「専務は、多分、一生、ここには来ないと
思います。」

「なんでですか?」

「専務が伊藤課長に告白した場所だからです。
だから、ここは、私の原点というか、ここが
あったから、私が存在すると言っても過言では
ない場所なんです。」

「そうだったんですね。
それは、俺もこの店に感謝しなきゃ。」

「え?」

「だって、この店があったから、俺は絆さんに
会えた訳でしょ?」

章吾さんがすぐ横で微笑んでる。

どうしよう。

どうやって切り出そう。

こんなに嬉しそうなのに。

< 166 / 318 >

この作品をシェア

pagetop