「ん?
結婚を前提としたお付き合いじゃないん
ですか?
春山さんはなんて?」

「あの、仁くんは、結婚しようって言って
くれてます。」

私はなおも言葉を濁す。

「つまり、絆さんが結婚を望まれてないという
事ですか?」

章吾さんが私の顔をじっと見る。

私は章吾さんから目を逸らして答える。

「仁くんは日本にほとんどいないので…」

「………ああ。
つまり、別居婚のような状態を心配して
らっしゃるんですか?」

章吾さんの声が優しい。

「はい。
宮本専務と伊藤課長が別れたのも、転勤に
よる遠距離恋愛が原因なので、昔から遠距離
恋愛だけはしないと心に決めていて…」

すると、章吾さんはネックレスの箱を握る私の手をそっと握りしめた。

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