頭の中も心の中も全てが仁くんでいっぱいになる。

恥ずかしくて、でも、幸せで、このまま、時が止まってしまえばいいとさえ、思った。

しばらくして、仁くんは唇を離すと、くすりと笑みを浮かべて言った。

「ごめん。口紅取れちゃった。」

仁くんは手で自分の唇についた口紅を拭う。

「山崎さんもそろそろ戻ってくるから、続きは
また今夜ね。
絆、その色っぽい顔、なんとかならない?
他の男に絶対見せたくないんだけど。」

え!?
私、今、どんな顔してるの?
っていうか、今夜?
今夜って、今夜!?

私の心臓はバクバクと大きな音を立てて、鳴りっぱなしだ。

仁くんは、私を膝に乗せたまま腕を緩めてくれないから、下りる事も出来ない。

「あの、仁くん?
山崎さんが戻ってくるなら、そろそろ
下ろしてもらってもいいかな?」

私が勇気を振り絞って言うと、

「山崎さんは、これくらい気にしないよ。」

と言って、一向に腕を緩めてくれない。
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